知的障害のある子の親なきあとは?

今年の春は気温が低い日が多かったせいか、桜を長く楽しむことができましたね!皆さんはお花見を楽しまれましたか?

長崎市育成会では会員定例会において、昨年から5回シリーズで「親心の記録」への記入に取り組んできました。その「親心の記録」の監修に当たられた渡部伸さんを講師に迎え、4月13日ハートセンター研修室にて研修会を開催しました。渡部さんは行政書士、社会保険労務士として活躍され、またご自身も知的障害のある子の親として「世田谷区手をつなぐ親の会」の会長を務められています。さらに知的障害の子どもの親の共通の悩みである「親なきあと」を共に考える「親なきあと相談室」を主宰され、日々その経験を基に各地で講演活動にも精力的に取り組まれています。

2時間の渡部さんの講演は実例を交え具体的に話され、ユーモアに富んだ肩の凝らない講演でした。「福祉制度は10年前より確実に良くなっている。しかしその制度を使うのは人である。子どもの利用している事業所、相談支援事業所、民生委員、親の会など何らかのつながりを持って制度を活用してほしい。孤立しないようにどこかとつながっていれば大丈夫!」とのお話は、ともすれば重く暗くなりがちな親なきあとのテーマに光を当ててくれるお話でした。100名ほどの参加者の皆さんも同じ親の立場で、普段聞きにくいお金の残し方や、相続の問題を率直にお話になる渡部さんの講演に大満足頂いたようでした。今後も会員のニーズに沿った研修会を開催していきたいと考えています。お聞きになりたいテーマや、取り上げてほしい話題がありましたら啓発事業部へご連絡ください。

 

 

 

 

みんなで書いてみよう!part5 完成!「親心の記録」

平成最後の定例会はいよいよクライマックスの「親心の記録」記入パート5です。「親として支援者に伝えたいこと」では、好みや生活習慣などからどんな人生を送ってほしいかまで、箇条書きにしてみると伝えたいことがたくさんあり、親の思いがあふれる内容となりました。「こどもの健康とその対応」については入院の手続きや介護や延命措置など気の重くなるような項目が並んでいました。中には、これを親が決めてもいいのだろうかと疑問を持つ方もいらっしゃいました。

親なき後も本人が好きなことを諦めず、楽しみながら生活できることが親としての切実な願いです。障害があっても豊かな生活の質を求め、親なき後も出来るだけ充実した生活をコーディネートしていただけるように、この冊子をわが子の支援に役立てたいと言われていました。まだまだ、書き足りないところもありますが、完成させたことで親なきあとの準備が一つできたような気持になり、みなさん小さな達成感を得られたようでした。

●シリーズ全て参加された宮坂季代さんの感想

どう伝えればいいのか迷いながら書きましたが、ほかの方の話が参考になり足りないところを付け加えることもできました。本人の老後など考えると辛い部分もありましたが、みんなで話をする事によって前向きな気持ちになれたと思います。書きながら現在の息子の状態も見直し、どのような支援が必要か考えるよい機会にもなりました。将来の為にという気持ちでしたが、すぐに活用できるので、周りの支援者の方に伝えていきながら、定期的に見直して、状態により変更や付け加えたりしていきたいと思います。記録の必要性は感じていましたが、なかなか一人では取り掛かることができなかったので、今回定例会がよい機会となり完成できて本当に良かったと思います。

5月の定例会は広報あじさい139号でもお知らせしましたが、ケアホームさくらにショートステイ用の居室が5室増築されましたので、以下の予定で見学に行きたいと思います。必ず事前にお申し込みをお願いします。

5月17日(金)10:30~11:30        10:25までにあじさいの家に集合(お車の方はできるだけ乗り合わせてお越しください)

お申し込みはタイムケア事務局☎095-5677まで

聞いて!うちの子のおもしろ話

2月の定例会は「聞いて!うちの子のおもしろ話」と題しておしゃべり会形式で開催しました。人はそれぞれ生まれ持った性格や、成長や環境によって培われた個性があります。障害のある人の家族や支援者は、その障害特性や感覚の特異性から来る行動を時として困り感として捉えることがあります。しかし障害特性も視点を変えれば愉快で楽しい個性と捉えることができるのではないでしょうか?

「あなたの子どもさんのおもしろ話を教えてください。」と問いかけると、参加者の皆さんからはとても楽しいエピソードがたくさん出ました。朝から事業所に出勤するのが嫌なAさんは「靴がかわいそう!いつも踏みつけられて。」と言われたそうです。それを聞いたお母さんは「少しやせたら?そしたら靴が楽よ。」と答え、それを聞いたAさんは納得して素直に出勤されたそうです。また、お父さんとバスで買い物に出かけたBさん。夕方なぜかBさんだけが帰宅。お母さんが不思議に思いBさんに「お父さんは?」と尋ねると「お父さん、グーグー!」なんとお父さんはバスで寝過ごし、終点まで乗り過ごしてしまわれたそうです。自分が降りるとき一言声をかけてくれればと思いがちですが、お父さんが隣で寝ていても、自分が降りるべきバス停できちんと下車できたと解釈するとすごい能力だと感じることができます。また、「ドライブでご機嫌な時、自然と出てくる鼻歌(独創的な作詞、作曲)に音楽的センスを感じる。」と話される方もいらっしゃいました。ケーキ屋さんにシュークリームを買いに行かれたCさんは「シュークリーム、おいくつですか?」と尋ねられ「16歳です」と答えたそうで、次々に出てくる楽しいエピソードに、みなさん爆笑の連続でした。

日々の生活では障害特性のため、本人だけでなく家族も困り感を共有しているものですが、切り口を変えて捉え直してみると、とても豊かでユニークでほのぼのしたエピソードばかりです。障害特性ばかりに目を向けず、一人一人の豊かな個性や感性に目を向け独特の世界に身を置いてみると、見える景色が変わってくるかもしれません。

次回の定例会は3月14日(木)13:00~ 長崎市育成会 大橋事務所”親心の記録”の記入もいよいよ5回目を数えます。4月13日(土)に著者である渡辺伸氏をお迎えしての研修会も予定しておりますので、研修会ともに定例会にも是非参加ください。

 

 

「障害年金の上手な使い方・貯め方」セミナー開催

昨年8月に「お金との上手な付き合い方セミナー」と題し、会員さんでファイナンシャルプランナーのお母様に来ていただきお話を伺いましたが、今回はさらにポイントを絞って、さらに深くお話していただこうということで第2弾を定例会として開催しました。皆さん関心が高く38名(お申し込みは43名)の方にご参加いただきました。

障害のある本人が働いている間は賃金と障害年金が本人の収入となりますが、企業就労か福祉的就労かによって賃金は異なりますし、年金の金額も一種と二種では異なります。自宅で暮らしているか、グループホームに入居しているか、ひとり暮らしかで本人の支出も大きく変わります。そこで支出を「日常の財布」と「将来に向けての財布」の2つに分けること、「日常の財布」には「病気やけがに備える仕組み」(障害があっても入れる保険)が必要であること、障害年金を「貯める」ことを考えると一生涯受け取れるということで障害があっても入れる個人年金保険の利用が効果的という話がありました。

 また親に収入がある間は障害のある子に対して援助も出来ますが、状況によっては障害のある子の年金を頼りにすることもあるかもしれません。経済的死亡(生きているのに働けない就労不能状態)、収支の悪化、物価や消費税の上昇など、さまざまな原因で支出が上回らないよう親自身も収支のバランスを保ち、「貯める」ことを考えること、そのためには金利と複利を味方につけることが大切だそうです。

親も子も長生きした時に困らないように備えることが大切であり、親のことを考えることが子どものためになるという言葉が身につまされました。

次回の定例会は「聞いて!うちの子のおもしろ話」というテーマでおしゃべりしませんか。障害特性から来る困った行動も見方を変えれば愉快な行動だと思えるかもしれませんよ。

2月13日(水)10:00~12:00 ハートセンター5F社会適応訓練室

 

みんなで書いてみよう PART 4 !

2018年最後の定例会は「みんなで書いてみよう パート4!」と題して4回目となる”親心の記録”を記入しました。今回は”コミュニケーションや社会性”、”移動や外出時について”を記入しました。知的障害とりわけ自閉症などの発達障害のある方々はコミュニケーションの困難さが問題として挙げられます。長年一緒に生活する親であってもスムーズにコミュニケーションを図ることはなかなか難しいものですが、そんな親だからこそわかるその人なりのコミュニケーションの図り方を、第三者に伝えるという重要性に改めて気付かれたようでした。また、他の参加者の方のお話を聞くことで、それぞれが自分と子どもとのコミュニケーションの見直しにもつながる重要な作業だと感じられたようでした。さらに「いつもこうだからと勘違いして決めつけた行動をしてしまい、本人の真意が別にあったと気づいた時に反省した。」と話された方もいて、親であっても(親だからこそ)障害のある本人の真意はどこにあるのかを探すよう心がけなければならないと感じました。

”移動や外出について”は、その障害特性でもあるこだわりから来るエピソードで盛り上がりました。公共交通機関を利用するとき、自分の好きな席(バスの一番前の左側)に座りたくて他の人を押しのけて座ろうとしてしまう、周囲の人と適正な距離感を測るのが苦手なため他の人に接近してしまう、など社会的なルールやマナーを守ることができにくい方も多いようです。参加者一人一人いろいろな困りごとがあるようでしたが、”親心の記録”を事前に支援者に見てもらうことでトラブルを未然に防ぐことができるのではないかと思います。”親心の記録”も残すところあと3ページとなりました。一人ではなかなかはかどらない記入も、定例会で他の参加者と話し合いながら記入することで新たな見方ができたり、今まで気づかなかった受け取り方が出来たりとより深い物になっていくようです。

4月13日(土)10:00~ハートセンター2階研修室にて、”親心の記録”を監修された渡部伸様をお迎えして研修会を開催する予定です。ご自身も知的障害のある子の親でもあり、行政書士として「親なきあと」相談室を主宰されている渡部様の貴重な講演を是非この機会にお聴きください。